ある日、虎徹君は、絵本の世界へ飛び込んでしまいました。 それは、3度目の冬でした。 珍しく大雪が降り、僕は、胸の奥に何かモヤモヤするものを感じたのです。 血が騒いだと言うか、家の人には黙って、一人で裏山に散歩へ行きました。 自由に走れ回れるってのは、最高の気分です。気が付いたら、ずいぶん山奥の方まで入ってきていました。 突然、目の前に、何か動く物を感じたのです。僕に良く似た、姿をしているのですが、ワン君とは違う雰囲気でした。 太い尻尾に鋭い目つき、僕は怖くなって、そっと後ずさりして、一目散に山を下りたのです。 どうしても、あの日のことが気になって、又黙って家を抜け出しました。 一度覚えた道は忘れません。ズンズンと山奥へ進むと、未知の遭遇をした所へと辿り着いたのです。でも、あの変な生き物の姿は見あたりません。 ウオーン・・ゥオーン・・・遠くの方から聞こえてきます。僕は、意識はしていなかったのですが、思わず大きな口を開けて、ウーオオーン・・ゥオォーン・・・と、さけんでいました。 自然と、足が声の聞こえる方へと向かったのです。再会です。しばらく、にらみ合っていたのですが、僕を襲ってくる様子はありません。 僕は、尻尾を上げ、左右に振って、二、三歩近寄ったのです。すると、向こうも、大きな尻尾を振り子の様に動かしながら、近寄ってきたのです。 もう大丈夫です。 それから季節が移り、セミがせわしく鳴き出した頃でした。山の方から、誰かが、僕を呼んでるような気がするのです。 気がついたとき時には、 もう、裏山へ向かって走り出していました。家の人には悪いけど、またまた、無断外出をしてしまったのです。やっぱり、彼が僕を呼んでいたのでした。 彼と初めて会った時は、怖くて、とても、僕の友達にはなれないって思っていたんだけど、話してみると、気さくなヤツなんです。すっかり、仲良しになりました。 僕等は、 同じお日様の下で、生きてるんだね!同じ空気を吸って、同じお月さんを見ながら寝るんだね!山の獲物が少なくなったら、僕の家へ遊びにおいでよ。僕の食い物、半分やるよ! |